日常のちょっと悲しい瞬間を「飛び出す絵本」にして楽しい思い出にする

<こちらの記事がオモコロ杯2023で優秀賞を受賞しました

 


日常生活におけるちょっとした悲しい瞬間。誰にでもありますよね。

スマホを落として画面バキバキにしちゃったり、大事な用事に遅刻しちゃったり。

 

私はこの前、マックのポテトを買ってテンションが上りはしゃいでいた結果、そのまま道路にポテトを落としてしまいました。(飛び出したやつ以外は美味しくいただきました)

 

こういう時って、「あのときはやっちゃったな……」と後からも思い出して、心の中のアルバムにどんどん悲しい瞬間がストックされていきませんか……?

 

実際、私はテレビでマックのCMを見かけるたびに、

 

あのときのポテトもったいなかったな……

 

今、単品で380円もすんのにな……

 

とりあえず反射的に写真撮っちゃう自分も「スマホ依存の現代人」っぽくてなんか嫌だったな……

 

と負のスパイラル脳内反省会が始まってしまいます。

 

そんなポテトの呪縛から逃れられずにいたある日のこと。

 

『不思議の国のアリス』

『不思議の国のアリス』が好きな私は、前から気になっていたこちらの飛び出す絵本を買ってみたのですが、家で開いたところ……

 

……え?

 

めっちゃ飛び出してない……???

 

想像の10倍くらい飛び出してきてビビりました。

 

アリスの頭上でトランプが舞い散る一瞬を空間いっぱいに再現しており、とにかく迫力がすんごい。

 

紙の魔術師 ロバート・サブダ氏(出典:絵本ナビ

それもそのはず、私は全然知らずに買っていたのですが、この飛び出す絵本版『不思議の国のアリス』は、”紙の魔術師”の異名を持つ凄腕の飛び出す絵本作家、ロバート・サブダ氏の代表作だったのです。

 

要するに何が言いたいかというと……

 

カワイイ~!!!!

 

キモイ~!!!!!!

 

スゴイ~!!!!!!

 

 

ほんと楽しい。うん。

 

 

同居している兄もこの有様。大人も夢中になっちゃうほどのコンテンツ力をもっているのです。

 

そして、飛び出す絵本にビビりまくっている兄を見ていた瞬間、私の脳内に稲妻が走りました。

 

 

「この飛び出す絵本スタイルでアルバムを作れば、たとえ”悲しい瞬間”であっても、”楽しい思い出”に変換できるのでは……?」

 

ポテトを落としちゃったあの瞬間も、飛び出す絵本にしたらきっと楽しくなるはず。

これはもう、やるっきゃない。

 

飛び出す絵本を作る作家のことを、欧米では「ペーパーエンジニア」と呼ぶ。

 

そう、飛び出す絵本の制作は、本来は技術者と呼ばれる専門家の領域になる。

 

これは、そのあまりに高いハードルを乗り越えようともがく、一人の男の物語である。

 

 

飛び出す絵本について学ぼう

 

というわけで、この記事では「飛び出す絵本スタイルでアルバムを作れば、たとえ”悲しい瞬間”であっても”楽しい思い出”にできるか?」を検証します。

 

記憶をさかのぼって変えられないなら、記録方法を変えて記憶を上書きしてしまおうというライフハックですね。

 

めちゃくちゃ現実逃避でしかない気もしますが、今の私には必要なんです。

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』

飛び出す絵本は「しかけ絵本」とも呼ばれるように、ページの開閉に連動したしかけ(ポップアップ)が特徴です。

 

飛び出す絵本形式でアルバムを作るとなると、当然このしかけについて学ばなければなりません。

 

素人がゼロから作るとなるとなかなか大変そうですが、果たして独学でどこまでマスターできるでしょうか?

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』より

とりあえず図書館で司書さんに相談したところ、こちらの本を持ってきてくれました。

 

掲載されている作品例の作り方が図とともに解説されています。よし、この本を読んで飛び出す絵本の作り方をマスターしよう。

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』より

ということで、まずは基本の斜折りのページをめくって眺めてみたのですが……

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』より

数学の問題集……?

いきなり記号満載の図形問題みたいなやつが出てきた。

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』より

お願いだから数学の証明みたいな文章始めないで……。

 

子供向けの工作を楽しむ本かと思いきや、中身は完全に大人向けでした。

 

パーツの角度や位置がしかけの動きと密接に関係してくるようで、不等号などの記号で細かく数字の指定がされています。数字が苦手な私からすると、これはなかなか辛い……。

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』より

あと、3次元のしかけを2次元の図で解説されてもよく分からない……。

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』より

このお馬さんとか、どういう状態なの???

予想以上に難しそうで計画に暗雲が立ち込めてきました。この本での習得は無理かも……。

 

 

実物の飛び出す絵本を見て学ぶ作戦に変更

『不思議の国のアリス』/ 『オズの魔法使い』

3次元に飛び出すしかけを2次元の図形で説明されてもよく分からなかったので、実際の飛び出す絵本を観察してしかけをマスターする作戦に変更。

 

ということで、”紙の魔術師”ことロバート・サブダ氏の超絶しかけが楽しめる飛び出す絵本2冊をじっくり観察してみます。

 

イメージが湧きづらい2次元の図形と違って、やっぱり3Dで見たほうがしかけをダイレクトに理解できそうです。

 

立体だといろんな角度から見れるのもいいですね。

 

下から見たり、

 

横から覗き込んでみたり、

 

全然わかんね~。

 

 

最強の「飛び出す絵本」解説本、登場

 

2次元の図形じゃよくわかんね~と思って3Dの実物を見てみたものの、初心者向けじゃないしかけもりもり超絶技巧をいくら観察しても全然分からないという結果に。

 

意外とネットでも飛び出す絵本のしかけを解説しているサイトは少なく、どうしたものかと途方に暮れていたところ、とんでもない最強の1冊に巡り合いました。

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』

それがこちら、『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』という一冊。

人間の顔だとしたら気持ち悪すぎるデザインの表紙が気になりますね。

 

「ポップアップ絵本の作り方が学べる決定版ベストセラーです!」と書かれている通り、この本はとにかく飛び出す絵本のしかけの解説に徹しています。

 

私はこの本を開いた瞬間、めちゃくちゃ感動してしまいました。それはなぜかというと……

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

見てください! このようにポップアップしかけの図鑑のような作りになっており、

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

なんと全てに実物サンプルを完備。

 

本を開いたまま、しかけごとに開いたり閉じたりできるのでめちゃくちゃ分かりやすいんです。

 

飛び出す絵本の解説本は、動物とかモチーフの作品例があってその作り方を解説しているパターンが多いのですが、この本は「一つ一つのしかけ」の解説に特化しています。

 

自分でしかけをミックスすればオリジナルの作品を作れるので、まさに今の自分にぴったりな一冊。

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

実はこの本にも1ページ目に作品例?があったのですが、かわいさとかを一切加味していない、ただひたすらにありったけのしかけを盛り込んだ「しかけ全部のせクリーチャー」みたいなやつがいました。

 

表紙のデザインといい、この著者の造形センスがちょっと心配になります。

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

この本、いろんなしかけが図鑑のように並んでいるので、眺めるだけでもかなり楽しめます。本を開くと音がなるしかけや……

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

………………??????

回転スピードがアホ早くてカメラ越しでは残像になっちゃうしかけなどがあります。仕組みが謎すぎる。

 

ということで、この本でしかけをマスターしよう!と思ったのですが、残念なことにこの本にはしかけの展開図が載っていませんでした……。

 

『ポップアップの世界 飛び出すしかけ、8つの基本』

複雑なしかけは実物を見るだけでは展開図の形がわからないことも多いので、なんとか展開図を入手できないものか……と資料を探しまくった結果、なんと原寸大の型紙がセットになったこちらの本と巡り会えました! よっしゃ!

 

『ポップアップの世界 飛び出すしかけ、8つの基本』より

これでなんとか飛び出す絵本のしかけをマスターできそうです。

 

 

日常のちょっと悲しい瞬間を「飛び出す絵本」にしよう

事前に本で基礎練習をしたのち、いよいよ悲しい瞬間の飛び出す絵本制作に取り掛かります。

 

使用する道具はこちら。接着には両面テープとセメダインCを使用。なんかセメダインCが最適らしいです。

 

円形に紙を切ることも多いので、分度器や円形カッターもあると便利。定規はカッターで削れない金属製のほうが使いやすいです。

 

今回はハガキくらいの厚さのフォトマット紙に写真を印刷して作品を作っていきます。負荷のかかりやすい部分のためにちょっと厚めの画用紙も用意しました。

 

土台となる本は、Amazonで売っていた手作り絵本用の白無地絵本を使います。

 

これを土台にして「日常のちょっと悲しい瞬間の飛び出す絵本アルバム」を作成していくわけですが……

 

買った白無地絵本(3冊)の角が例外なくめっちゃ潰れてて、早速ちょっと悲しくなりました。

 

 

マックのポテトを落としちゃった瞬間を飛び出す絵本にしたら……?

ということで、初めに飛び出す絵本になる「日常のちょっと悲しい瞬間」はこちら!

 

マックのポテトを落としちゃった瞬間です。

 

誰がどう見ても「悲しい瞬間」なこちらの一枚。はたして、どんな飛び出す絵本になるでしょうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ!!!! ポテトがっ!!!!!

 

めちゃくちゃ地面に!!!!!!!!

 

飛び出しちゃってるぅぅ!!!!!!

 

 

 

どうですか、みなさん。飛び出す絵本のポテンシャルの高さに、茫然自失となっているのではないでしょうか。

 

ポテトが地面にズサァ……と飛び出していく無慈悲な瞬間を、生々しく再現しています。

 

しかけを学び、実写の写真と組み合わせることで、全く新しい形の飛び出す絵本を誕生させてしまいました。

 

ちなみに、写真に「呆然と立ち尽くしている私の足(サンダル)」が映り込んでいたので……

 

「立ち尽くす自分の足」も再現しときました。

 

正面から見ると、膨らみ加減が本物そっくりでめっちゃリアル!!!

 

ポテトも実際の容器を使用し、よりリアルに「あの瞬間」を再現できました。

 

もちろん、閉じちゃってOKです。あんなに飛び出していたポテトもサンダルもこの通り、ぺちゃんこに。

 

学校や会社の机の上でポテトを飛び出したくなっても、書類なんかと一緒にカバンにいれて持っていけるので安心です。

 

 

飛び出すポテト製作記

「ポテトを落としてしまった瞬間を、飛び出す絵本にしなさい」

 

芸術家の卵たちが恐れおののく藝大の入試でも、こんな問をぶつけられることはありませんが、私はこの難問に一人で立ち向かわなければなりません。

 

今回はポテトが容器から飛び出す瞬間を再現したかったので、

・ポテトが容器からスライドする

・ポテトが上に飛び出す

・ポテト容器を立体的に膨らます

この3つのアクションを実現したいと思います。

 

ということで、心強い味方『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』を召喚!

しかけ一覧の中に、条件を完全にクリアしてくれるしかけがあればいいのですが……

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

……あ!

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

キミに決めた!!!

 

しかけを指名したら、早速パーツを作成。

まずは「あの日の写真」をフォトマット紙に印刷してポテトをカッターで切り出し、

 

こんな感じにくり抜きます。

 

そして『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』のしかけを観察し必要なパーツを作り、

 

ポテトの裏側にフュージョン。

 

土台となる白無地絵本には、そのへんのアスファルトの写真を貼り付けます。

 

アスファルトの上に、しかけをフュージョンしたポテト台紙を貼り付ければ……?

 

ポテトが立った!!!

絵本台紙から3cmほど浮かび上がった状態に。

 

そしてポテト容器をスッ……

 

「ポテトを落としてしまった瞬間を、飛び出す絵本にしなさい」

出来らあっ!!!

 

完成しました。

やった~。

 

仮パーツでの予行シミュレーションの様子

2つ並んだ正四角形が横に倒れ込んだり起き上がったりすることで、

・ポテトが容器からスライドする

・ポテトが上に飛び出す

・連動して潰れた状態の容器が立体的に膨らむ

という仕組みになっています。

 

お手本通りにパーツを作ったところ、ポテト台紙がポテト容器に引っかかって正四角形があんまり起き上がってくれないというエラーが発生したのですが、あえて外側の辺のみ長さを2mm短くしたところ……

 

凄十もびっくりのおっきパワーを実現しました。やったぜ。

 

お次はサンダルです。このアングル、マジでサンダルに足突っ込んでるようにしか見えなくないですか?

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

リアルなサンダルの膨らみを可能にしてくれたのが、このアーチのしかけ。

本を開くとアーチ状に膨らみ、閉じると平らに戻ります。

 

まずは、サンダルパーツ&しかけに必要なパーツを切り出し、2つを貼り合わせます。

 

ここからが結構複雑なのですが、このしかけは土台となるアスファルト台紙に切れ込みを入れ、下をくぐらせる構造になっています。

 

こんな感じでQの字状にしたら、

 

右ページのアスファルト台紙にも切れ込みを入れ、ベルト状のストラップを右ページの白無地絵本に直接に貼り付けます。

 

最後にストラップ&サンダルの内側に写真を貼っつけて完成!

 

本を開くとストラップがサンダルを引っ張り、閉じるとストラップがサンダルを押し戻すという仕組みです。

 

ちなみに、予備としてポテト容器を何個か確保するためポテナゲを食べまくったのですが、

 

その結果、1日の食生活を採点してくれるアプリ「あすけん」のAI栄養士に、4点という見たことない鼻くそみたいな点数をつけられてしまいました。

 

10点満点じゃなくて100点満点なんですよ、これ。

 

余ったポテト容器は、デスク横の壁掛けポテチカップとして活用しています。

 

 

自販機でジュース買おうとしたら排水溝に小銭が吸い込まれちゃった瞬間を飛び出す絵本にしたら……?

 

次に飛び出す絵本になる「日常のちょっと悲しい瞬間」は……

 

 

「自販機でジュース買おうとしたら、絶妙すぎるポジションにある排水溝に小銭が吸い込まれちゃった瞬間」です。

 

過去に小銭を失ってしまった自販機と排水溝がこちら。

 

マックでポテトを買った後、嬉しくて「飲み物はマックで買うより自販機で買ったほうが安くてオトクでござるwww」と変なテンションになりながら小銭を投入口に入れようとしたところ、そのまま小銭は自販機の前の排水溝へ転がっていきました……。

 

結局オトクでもなんでもない結末を迎え、一人排水溝を見つめながら呆然と佇むという結果に。

 

はたして、このシュチエーションを飛び出す絵本でどこまで再現できるでしょうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツは……

 

どうみても……

 

あの時の自販機じゃねえか!!!!!

 

ということで、自販機の直方体を完全再現することに成功しました。

 

こんな箱型の構造物も、飛び出す絵本のしかけを利用すれば作れちゃうんですね。スゲッ。

 

立体的になったり平らに戻ったりする様子はまるでトランスフォーマーの変身のよう。眺めるだけでも結構楽しい。

 

そして、小銭を排水溝に落としガックリとうなだれる私、シュゴウの哀愁ただよう姿も完全再現。めちゃくちゃ悲しそうですね。

 

視線の先には因縁の排水溝があり、固定している輪ゴムを外すと飛び出すしかけになっています。

 

そして飛び出した排水溝を上から覗き込むと……

 

あっ!!!!!!

あの時吸い込まれた100円!!!!!!

 

ということで、おそらく世界一 切ない飛び出す絵本が完成。

排水溝の奥深くに100円が落ちちゃった瞬間を擬似体験できます。

 

とりあえず排水溝に仕返ししときました。

 

閉じるとこんな感じです!

 

あんなに立体で角ばっていた自販機もご覧の通りぺしゃんこに。

 

持ち運べるほどスリムなので、スタバでMacBooカタカタしている人の隣でいきなりこれを広げてビビらせることもできます。

 

 

飛び出す自販機 制作記

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』より

今回の自販機は、本を開くと箱が出現するこちらのしかけを使用しました。

 

この本には展開図がなく、どんな形のパーツを切り出せばいいのかよく分からなかったのですが、

 

『ポップアップの世界 飛び出すしかけ、8つの基本』より

原寸大型紙が付属しているもう一つのポップアップ解説本にお菓子の家の展開図が載っていたので、これを参考にしてなんとか自販機を作ることができました。

 

自販機のパーツはこちら。一見難しそうに見える箱のしかけですが、実は普通の箱の展開図とあんまり違いがありません。

 

その代わり、直方体の正面&裏面に折り目がつけられており、本を閉じるとこの折り目に沿ってたたまれるという仕組みのようです。

 

今回はリアリティにこだわるため、わざわざ小銭が吸い込まれた現場まで再度訪問。

 

素材を作るため、自販機の写真を撮影してきました。自販機横のチャリがなかなかどいてくれなくて、延々とチャリ主を待つ作業がしんどかったです。

 

撮影した写真は画像編集ソフトでサイズ調整などを施し、シール用紙に印刷。そしてシールを切り出した展開図に貼り、

 

最後にしかけのパーツを取り付ければ……

 

この通り、2Dと3Dを自在に行き来する自販機が完成! 変形シーンがかっこよすぎる。

 

次に私シュゴウを制作。まずはガックリしているポーズの写真を撮り、

 

印刷して切り出したら、半円状のしかけパーツとフュージョンします。

 

このしかけ、本を開くと直立するアクションが可能になるので、

 

こんな感じに貼り付けて、自販機と一緒に直立させます。

 

最後に排水溝。こちらも自販機と一緒に素材用の写真を撮影していたのですが……

 

近所にあった、別のかっこいい排水溝を採用しました。

 

穴を切り抜くと、「鉄の蓋」感が一気にアップ!

 

蓋は、真ん中を切り抜いたパーツ3枚と一緒に重ね合わせます。

 

一番下のパーツには、透明のビニールと一緒に、落としちゃった小銭110円を貼り付けておき、

 

ギザギザに折った画用紙と組み合わせてバネのようにしたら完成。

 

排水溝の中はこんな感じです。100円と一緒にくっけたはずの10円はどっか行きました。

 

穴は段々と小さくなっており、錯覚でより遠近感を感じるようになっているので、

 

排水溝の上から除くと、奥深くに100円が落ちちゃってる絶望感を存分に味わえます。

これ、ほんとに「排水溝の下に落ちちゃってる感」がすごいんですよ。

 

ロバート・サブダ氏 インタビュー画像(出典:絵本ナビ)

それもそのはず。実はこの排水溝のしかけ、おなじみ”紙の魔術師” ロバート・サブダ氏が「アリスが穴の中に落ちていくシーン」で使っていたしかけなんです。

 

インタビューでは、「彼女と一緒に落ちていくような体験ができるように工夫した」と答えていたサブダ氏ですが、まさかその工夫を「排水溝に小銭落とした体験ができるようにパクってる奴がいる」とは、夢にも思わないでしょう。許して~。

 

 

干していた布団が物干し竿ごと地面に倒れちゃう瞬間を飛び出す絵本にしたら……?

 

次に飛び出す絵本になる「日常のちょっと悲しい瞬間」は……

 

 

 

「干していた布団が物干し竿ごと地面に倒れちゃう瞬間」です。

 

はたして、「物干し竿が倒れ布団が砂にまみれる」という動きのあるアクションを、飛び出す絵本で再現できるのでしょうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

〔1カメ〕

 

 

 

 

〔2カメ〕



 

 

 

〔3カメ〕

 

 

 

 

 

【速報】世界初「物干し竿の飛び出す絵本」誕生




 

 

 

ウチの庭の物干し竿だあああああ!!!!!!!!!!

 

はい。この通り、物干し竿が垂直に立つさまを見事に再現できました。やったね。

 

なぜかうちの庭に大量にある三角コーンも……?

 

三角コーン▲ 完 全 再 現

 

これ、すごくかわいくないですか???

 

ちなみに大家さんいわく、「三角コーンは夜逃げした前の住人が残してったモノ」だそうです。

 

夜逃げした人も、自分が見捨てた三角コーンが飛び出す絵本になっていると知ったら、きっと「…………???」となることでしょう。

 

 

しかし、今回飛び出す絵本にするのは物干し竿でも三角コーンでもなく、このTwitterの動画の通り「干していた布団が物干し竿ごと地面に倒れちゃった瞬間」です。

 

「私が布団を干している瞬間」なら自分でもびっくりしちゃうくらいのクオリティで再現できたのですが、「風に吹かれて布団が物干し竿と一緒に地面に倒れる瞬間」となると、動きを伴うので飛び出す絵本で再現するのはさすがに……

 

 

アァーーーーーーーー!!

せっかく干した布団が砂まみれにィィィ!!!!!  

 

~布団が砂まみれになる最悪の瞬間、動きも含め完全再現~

 

実際に目の前で布団が砂にまみれたときは、「もう世界とかどうなってもいいや……」となるくらい最悪でしたが、飛び出す絵本ならば楽しさしかありません。最高。

 

ちなみに、角度を調整すれば「布団たたきをするシュゴウ」も完全再現できます。飛び出す絵本にしては日常パートすぎてウケますね。

 

ミニサイズとはいえ物干し竿なので、「一度水に浸した乾燥わかめを再び乾かす」用途にも使えます。

 

最初はただの真っ直ぐな棒に紐をつけていたのですが、全然物干し竿っぽくなかったので先を直角にまげ物干し竿感を追求しました。

 

いい年した大人なら、本当は子供の幸せとかを追求するべきだとは思うんですけど、私は気がついたら物干し竿感を追求してる人生でした。

 

そして、親戚のおばさんにもらって中学生ぐらいからずっと使っているこちらの布団。

 

「真四角にカットせず、下をちょっとふにゃふにゃにすると途端に布っぽくなる」という、二度と役に立たない気づきを得ました。ありがとう、イヴ・サンローラン。

 

ところで、こんなに長い棒が2本も飛び出ていて、さらにそれが紐で繋がっているとなると、ちゃんと閉じるのか気になりませんか……?

 

ということで閉じシーンを御覧ください。

 

 

 

エヴァの第3新東京市の格納シーンみたいでカッコイイ~~

布団がくるっと回転するのが、芸術点高くていいですよね。

 

ちょっともっこりしますが、閉じればこんなに薄くなります!

 

せっかくミニチュアの庭を手に入れたので、「庭に止めておきたい車No.1」のデロリアンを駐車しておきました。

 

 

物干し竿制作記

 

今までの作品の難易度レベルは

「自販機:★★★(ふつう)」

「ポテト:★★★★(難しい)」

くらいだったのですが、今回は

物干し竿:★★★★★★★★(激ムズ)」

と一気に難易度レベルがアップ。

 

まずは物干し竿ですが、「自販機飛び出し絵本」で私を直立させていたのと同じ半円状のしかけを使用します。

 

ただ、今回は半円状のパーツを2枚重ね、その間に竹串を差し込んでいます。こうすることで、この半円状のパーツと一緒に竹串が直立してくれるんですね。

 

そして私シュゴウですが、今回は物干し竿の根本の半円状パーツに連動させる形で直立させます。

 

このように、シュゴウパーツとストラップパーツを作り、

 

くり抜いた切れ目に差し込んだら、

 

物干し竿の根本の半円状パーツにストラップパーツの端をくっつけます。

 

通常飛び出す絵本のしかけは、本の真ん中の折れ目部分に設置することで、ページの開閉の動きと連動して動きます。

 

逆に、折れ目以外の部分では開閉が発生しないのでしかけを配置するのが難しくなるのですが、そんなときは「折り目部分のしかけ」→「それ以外の部分のしかけ」と動きを連動するパーツでつなげることで……

 

このように、折り目以外でも動きのあるしかけが配置できるようになるんです!

 

そして最もこだわった物干し竿の先端部分。実は見た目だけでなく、この先っちょにもしかけが施されています。

 

というのも、本の折り目に対して直角に突き出した形の突起物は、本を閉じるとこのように平らにならず、どうしても途中で地面に突っかかってしまいます。

 

そこで私は、物干し竿の先端パーツを固定せず竹串に差し込むだけにし、あえて先端が回転するように設計しました。

 

こうすることで……

 

地面に衝突すると先端部分のみ回転し、自動で最適な角度に変化!

 

直角部分にも竹串が入っているので、折れ曲がることなく平らな角度になるまで回転してくれます。

 

しかし、そのままだと回転した角度がもとに戻らず物干し竿の先端があらぬ方向を向いてしまいます……が!

 

起き上がり時には紐が先端部分を引っ張る「ひっぱり可動システム」が発動。

 

これで、外側に向いていた物干し竿の先端を内側にひっぱり戻してくれます。

 

本来は困難な「折り目に対して直角に突き出している物干し竿」を実現するため、頑張ってオリジナルのしかけを開発しました。物干し竿を飛び出す絵本にしたい方、よかったら参考にしてください。

 

布団が倒れる動画にも写っていた三角コーンは、

 

こんな形のパーツを切り出し、

 

白線のシールを貼って、

 

四角く飛び出している部分を地面に貼り付ければ完成!

 

これは結構簡単に作れるので、お試しでポップアップを体験したい人にもおすすめです。

今回の作品は、本の折り目の中央部分に構造物が密集しており、更に物干し竿2本と布団が紐で繋がれているため、「各パーツを干渉させることなくスムーズに収納ポジションに移行させる設計」がとにかく大変でした。

 

こんまりもドン引きのギチギチ収納

最終的に布団を回転させることで、物干し竿や三角コーンを干渉させずにハンバーガーのように重ね合わせることに成功しました。(←この文だけ読むと、意味不明すぎ)

 

 

検証結果

 

「飛び出す絵本スタイルでアルバムを作れば、たとえ”悲しい瞬間”であっても、”楽しい思い出”に変換できるのでは……?」

 

そんな思いから始まった今回の挑戦でしたが、3つの悲しい瞬間を飛び出す絵本にした結果は……

 

 

 

 

 

 

悲しい瞬間を楽しいギミック満載の飛び出す絵本にすることで、もはやすべてが楽しい思い出に。

 

飛び出す絵本を作る楽しさや出来上がった作品をポップアップさせる喜び、そして友だちに見せて盛り上がったりと、悲しかったはずの瞬間が、楽しい思い出を生み出す装置に生まれ変わりました。

 

今ではマックのCMを見るたびに一人でニヤニヤするキモいパブロフの犬みたいな状態に。これはもう、検証は成功と言っていいでしょう。

 

自作するまでは、「飛び出す絵本、4000円もするんですけど~!!!」と思っていましたが、印刷機で大量生産できる普通の本と違い、今回のように全部手作業で組み立てていると考えたら、「飛び出す絵本、逆に安すぎるんですけど~!!!」となりました。

 

飛び出す絵本の内容をまるごと撮影し、ナレーション入れて再生数荒稼ぎしてるキッズ向けYoutuberは、全身が水虫になる呪いにかかってください。

 

ちなみに、何日も家にこもって飛び出す絵本を作り続けた結果、部屋が「有馬記念終わった後の競馬場」みたいになってしまいました。

 

ちょうど「ウォーリーを探せ!」っぽくなっていたので、

 

暇な人は私を探してみてください。

 

以上、シュゴウがお送りしました。

 

 

 

シュゴウ (@shugou17) | Twitter

いろんなメディアで記事を書いてます。

 

 

<参考資料>

『不思議の国のアリス』『オズの魔法使い』

”紙の魔術師” ロバート・サブタ氏制作の飛び出す絵本。

 

『実物で学ぶしかけ絵本の基礎知識ポップアップ』

しかけが実物とともに個別に解説されているので、オリジナル作品の制作に便利。

 

『ポップアップの世界―飛び出すしかけ、8つの基本』

別冊で原寸大型紙がついているので、初心者でもわかりやすい。

 

『しかけ絵本の基礎知識 実技編〈1〉平行折り・斜折り』

解説が少し上級者向けだが、作品例は多い。

 

<しかけ絵本『不思議の国のアリス』制作秘話! ロバート・サブダさんインタビュー>

ロバート・サブタ氏作『不思議の国のアリス』の制作秘話インタビュー。

 

 

<答え>右上らへん